結論:経理は有効求人倍率0.55倍で、応募は集まりやすい職種です。採用の成否は、任せる業務の範囲を先に決め、経験の深さを選考で確かめられるかで決まります。数字は厚生労働省「一般職業紹介状況」の2026年8月の値です。

経理の採用方法を、厚生労働省の最新データとともに解説します。採用市場の数字、採用の前に決めること、求人票の書き方の例、向く採用経路、選考で見るポイントの順にまとめました。

経理の採用市場:有効求人倍率は0.55倍

総務省の日本標準職業分類では、経理事務員は中分類「会計事務従事者」に含まれます。厚生労働省の統計では、会計事務従事者の有効求人倍率は0.55倍です(2026年8月)。求職者1人に対して求人が0.55件ある状態で、全職業の1.06倍を下回ります。

項目 会計事務従事者 一般事務従事者 職業計
有効求人倍率 0.55倍 0.29倍 1.06倍
新規求人倍率 1.00倍 0.64倍 1.98倍
有効求人数 17,511人 119,803人 2,028,673人
有効求職者数 32,003人 409,453人 1,914,602人

出所は厚生労働省「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」の参考統計表です。常用(パートを含む)の実数で、季節調整はしていません。

同じ事務職でも、一般事務の有効求人倍率は0.29倍です。経理は一般事務より、求職者1人あたりの求人が多い職種です。新規求人倍率は1.00倍で、新しく出る求人と新しく仕事を探し始める人がほぼ同じ数になっています。

賃金の目安も確認しておきます。出所は厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)です。経理事務の賃金(年収)は512.2万円、平均年齢は44歳です(令和7年賃金構造基本統計調査を加工)。ハローワークの求人賃金(月額)は25.2万円です(令和7年度)。

倍率が低くても経理の採用が難しく感じる理由

ただし、応募が集まることと、求める経験者が採れることは別の話です。理由は次の3つです。

  1. 経験の幅が大きい:伝票入力だけの経験と、年次決算までの経験では、任せられる仕事が大きく違います。応募が多くても、決算まで担える人は限られます。
  2. 制度の変更で実務が変わった:2023年10月1日にインボイス制度が始まりました。2024年1月からは、電子で受け取った請求書などを電子データのまま保存する必要があります。請求書の確認や保存の手順が変わったため、新しい運用を理解している人が求められます。
  3. ひとり経理になりやすい:中小企業では経理を1人で担っている会社もあります。前任者の退職で急に募集すると、引き継ぎ期間が短くなり、即戦力の条件が厳しくなります。

採用の前に決める3つのこと

1. 任せる業務の範囲

「経理経験者」とだけ書くと、応募者と会社の想定がずれます。日次・月次・年次のどこまで任せるかを先に決めます。

業務の段階 主な業務 求める経験の例
日次 伝票入力、経費精算、入出金の管理 会計ソフトへの入力経験
月次 月次締め、試算表の作成、売掛金・買掛金の管理 月次決算を担当した経験
年次 決算整理、決算書の作成、税理士とのやり取り 年次決算の補助または担当の経験
周辺業務 給与計算、社会保険の手続き、請求書の発行 どこまで兼務するかを明記する

2. 雇用形態と働き方

経理は月末・月初と決算期に業務が集中します。正社員のほか、日次の入力をパートに任せる分け方もあります。繁忙期の残業の目安を事前に決めておくと、面接での説明がぶれません。

3. 経験と資格の条件

job tagでは、経理事務の仕事に日商簿記検定などが役立つとされています。ただし、資格は必須条件にせず歓迎条件にとどめる方が、応募の幅は広がります。実務で使った会計ソフトや、担当した決算の範囲を確かめる方が、入社後の働きぶりを見極めやすくなります。

経理の求人票の書き方(例)

求人票では、仕事内容を段階ごとに具体的に書きます。2024年4月1日からは、募集時に明示する労働条件が3つ増えました。「従事すべき業務の変更の範囲」「就業場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準」です。

項目 書き方の例
職種名 経理スタッフ(月次決算まで担当/年次決算は税理士と連携)
仕事内容 会計ソフトでの仕訳入力、経費精算の確認、月次の試算表作成、売掛金の入金確認。慣れてきたら決算資料の準備もお任せします。
使用ツール 使っている会計ソフト、経費精算システム、Excelで行う作業の範囲
体制 経理の人数、上長、顧問税理士との分担
必須条件 会計ソフトでの仕訳入力の実務経験
歓迎条件 月次決算の経験、日商簿記2級程度の知識
業務・就業場所の変更の範囲 実際の運用どおりに書く(例:就業場所は本社、変更なし)
働き方 月末・月初の残業の目安、在宅勤務の可否、繁忙期の時期

求人票全体の作り方は求人票の書き方で詳しく解説しています。

経理の採用に向く採用経路

採用経路 向いているケース 注意点
転職サイト(求人広告) 日次・月次の担当者を幅広く募集する 応募が多いため、書類選考の基準を先に決める
ハローワーク 地元で長く働く人を採用したい 仕事内容を具体的に書かないと、応募者の経験がそろわない
パート求人 入力や経費精算を短時間勤務で任せたい 勤務時間や日数の希望を確認する
人材紹介 決算まで担える経験者を急いで採りたい 採用が決まると成功報酬の費用がかかる
スカウト型サービス 特定の業界や会計ソフトの経験者を探したい スカウト文の作成と送信に手間がかかる

人材紹介の費用の考え方は人材紹介の手数料相場を参考にしてください。

選考で見るポイント

  1. 書類では担当範囲を確認する:職務経歴書の「経理業務全般」は、人によって意味が違います。日次・月次・年次のどこまで担当したかを、面接で聞き直します。
  2. 面接では月次の流れを説明してもらう:月初から締めまでに何をしていたかを順番に話してもらうと、実務の深さが分かります。
  3. 短い実務確認を入れる:仕訳を数問書いてもらう、試算表の数字の違和感を探してもらうなど、短時間で終わる課題を用意します。
  4. 正確さと確認のしかたを見る:経理は小さな誤りが後で大きな手戻りになります。分からないときに誰にどう確認するかを聞くと、仕事の進め方が見えます。
  5. 制度変更への対応を聞く:インボイス制度や電子取引データの保存に、前職でどう対応したかを聞きます。

面接の進め方は中小企業の面接ガイドも参考にしてください。

採用代行の現場で分かっていること

経理の採用でよくある失敗は、前任者の退職が決まってから募集を始めることです。引き継ぎの期間が短いと「決算まで1人でできる人」という条件になり、対象者が一気に減ります。退職の申し出があった時点で日次の入力を社内の他の人やパートに移し、募集する人の担当を月次までに絞ると、候補者の数を保てます。

また、求人票に「経理全般」とだけ書くと、入力業務を希望する人と決算の経験者が混ざって応募してきます。書類選考に時間がかかり、面接に呼びたい人への連絡が遅れます。段階ごとの業務を書き分けるだけで、応募者の経験がそろいやすくなります。

面接では、経験者ほど会社の会計ソフトや顧問税理士との分担を気にします。使っているソフトの名前、税理士にどこまで任せているか、締め日のスケジュールを面接官が説明できるようにします。答えがはっきりしているほど、内定承諾まで進みやすくなります。採用担当がいない会社では、こうした準備と候補者対応を採用代行に任せる方法もあります。

よくある質問

経理の有効求人倍率はどのくらいですか。

厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、経理が含まれる会計事務従事者の有効求人倍率は0.55倍です(2026年8月、常用・パートを含む)。全職業の1.06倍より低い水準です。

経理の求人で簿記の資格は必須にすべきですか。

必須にすると応募の幅が狭くなります。資格は歓迎条件にとどめ、会計ソフトでの入力経験や月次決算の経験など、実務の条件で判断する方法が向いています。

未経験者を経理として採用しても大丈夫ですか。

教える人がいれば可能です。job tagでも、伝票処理や記帳などの簡単な業務から始め、数年かけて経理全般を担えるようになる職業とされています。ひとり経理の会社では、顧問税理士の支援を受けられるかを先に確認します。

経理の求人票で新しく書く必要がある項目はありますか。

2024年4月1日から、募集時に業務の変更の範囲、就業場所の変更の範囲、有期労働契約を更新する場合の基準を明示する必要があります。厚生労働省の資料で項目を確認できます。

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