結論:ITエンジニアの採用は、職種と必須の経験を絞り、開発環境と働き方を求人票に具体的に書くことが近道です。情報処理・通信技術者の新規求人倍率は2.88倍(2026年8月)で、新しく出る求人に対して求職者が少ない状態です。
ITエンジニアの求人倍率と採用市場(2026年)
厚生労働省の「一般職業紹介状況(令和8年8月分)」によると、情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.33倍です。新規求人倍率は2.88倍で、職業計の1.98倍を大きく上回ります。いずれもパートタイムを含む常用の値です。
| 区分(2026年8月) | 有効求人倍率 | 新規求人倍率 | 有効求人数 | 有効求職者数 |
|---|---|---|---|---|
| 情報処理・通信技術者 | 1.33倍 | 2.88倍 | 51,958人 | 39,174人 |
| 職業計 | 1.06倍 | 1.98倍 | 2,028,673人 | 1,914,602人 |
前年同月と比べると、有効求人倍率は0.09ポイント、新規求人倍率は0.43ポイント下がりました。それでも全職業の平均より高く、求人が求職者を上回る状態が続いています。
職種によって採りやすさは大きく違う
同じITエンジニアでも、担当する工程によって倍率が変わります。厚生労働省のjob tagに載る値(令和7年度、ハローワーク求人統計データ)は次のとおりです。
| 職業(job tagの名称) | 有効求人倍率 | 求人賃金(月額) |
|---|---|---|
| システムエンジニア(受託開発) | 2.54倍 | 36.4万円 |
| システムエンジニア(基盤システム) | 2.24倍 | 35.3万円 |
| プログラマー | 0.98倍 | 33.9万円 |
設計や基盤の構築ができる人ほど採りにくく、プログラマーは比較的応募が集まりやすいことが分かります。経験者だけを狙うのか、プログラマーとして採用して育てるのかで、打ち手が変わります。
中長期でも人手不足は続く見込みです。経済産業省の「IT人材需給に関する調査」(2019年)は、2030年のIT人材の需給ギャップを45万人と試算しています。IT需要の伸びを年2.7%程度、労働生産性の上昇を年0.7%とした場合の値です。
ITエンジニアの採用が難しい3つの理由
- 経験者の取り合いになる:新規求人倍率が2.88倍と高く、経験者には複数の会社から声がかかります。条件や仕事の魅力が伝わらないと、比べる段階で外れます。
- 求人票から仕事が想像できない:使う言語やツール、開発の体制、在宅勤務の可否が書かれていない求人は、エンジニアが判断できず応募に至りません。
- 選考が遅く、評価の基準がない:現場のエンジニアが忙しく面接の日程が先になる、技術の見方が面接官ごとに違う、といった理由で辞退が起きます。
募集の前に決める3つのこと
応募を集める前に、次の3点を社内で決めておきます。ここがあいまいなまま求人を出すと、応募が来ても選べません。
| 決めること | 決め方の例 |
|---|---|
| 職種と担当工程 | 社内システムの運用(社内SE)、自社サービスの開発、クラウドの構築など、どの工程を任せるかを1つに絞る |
| 経験者か育成か | 経験者なら必須の経験を2つまでに絞る。育成なら教える人と、独り立ちまでの期間を決める |
| 働き方 | 出社の頻度、在宅勤務の可否、客先で働く可能性の有無を決め、求人票にそのまま書く |
ITエンジニアの求人票の書き方(例つき)
エンジニアは、仕事内容と開発環境を見て応募を決めます。抽象的な言葉より、具体的な名前と体制を書きます。次は自社サービスの開発職を想定した記載例です。
| 項目 | 記載例 |
|---|---|
| 職種名 | Webアプリケーションエンジニア(自社サービス/サーバー側) |
| 仕事内容 | 自社の予約管理サービスの機能追加と改善。設計からテスト、リリースまでを担当します。 |
| 開発環境 | 言語:PHP(Laravel)/データベース:MySQL/クラウド:AWS/ツール:GitHub、Slack |
| 開発体制 | エンジニア4名(リーダー1名)。すべての変更にコードレビューがあります。 |
| 働き方 | 週2日出社、週3日在宅。フレックスタイム制。 |
| 必須の経験 | PHPでの業務開発の経験、Gitを使ったチーム開発の経験 |
| 給与 | 月給の下限と上限を書き、経験とスキルでどう決めるかを1文で添えます。 |
| 変更の範囲 | 業務:会社の定める業務/就業場所:本社および在宅(会社の定める場所) |
2024年4月からは、募集の時点で「従事すべき業務の変更の範囲」と「就業の場所の変更の範囲」を明示する必要があります。客先で働く可能性がある場合は、その旨を就業場所の変更の範囲に書きます。求人票全体の作り方は求人票の書き方で解説しています。
ITエンジニアの採用に向く媒体・採用経路
経験者を狙うなら、待つ媒体より、会社から声をかけるスカウトが中心になります。経路ごとの特徴は次のとおりです。料金の仕組みは各媒体の記事で、公式サイトの情報をもとにまとめています。
| 採用経路 | 特徴 | 向くケース |
|---|---|---|
| エンジニア向けの求人サイト(paiza、Greenなど) | エンジニア向けに作られたサービスで、技術の情報を前面に出して募集できる | 開発職の経験者・若手 |
| スカウト型サービス(ビズリーチ、dodaダイレクトなど) | 経歴を見て会社から直接声をかける | リーダー、設計ができる経験者 |
| つながり型のサービス(YOUTRUST、Wantedlyなど) | カジュアル面談から関係をつくる | 転職を急いでいない層 |
| 総合転職サイト(doda、typeなど) | 幅広い職種の求人を扱う | 社内SE、未経験からの育成 |
| 社員の紹介(リファラル) | 社員の知人に声をかける | エンジニアが社内にいる会社 |
社員の紹介は掲載費がかからず、仕事の実態を伝えやすい経路です。進め方はリファラル採用の進め方をご覧ください。
選考で見るポイントと質問例
選考は「何を担当し、どう考えたか」を確かめる場にします。経験年数だけで書類を落とすと、力のある人を逃します。
- 書類:担当した工程(要件定義、設計、実装、テスト、運用)と、チームでの役割を見ます。
- カジュアル面談:選考の前に、現場のエンジニアが仕事内容と開発環境を説明します。
- 技術面接:過去に作ったものを説明してもらい、判断の理由を聞きます。現場のエンジニアが同席します。
- 課題:出す場合は短時間で終わる内容にし、事前に所要時間を伝えます。
- 合否の連絡:面接の後、できるだけ早く連絡します。他社の選考が同時に進んでいるためです。
| 確かめたいこと | 質問例 |
|---|---|
| 担当範囲 | 直近のプロジェクトで、ご自身が担当した工程と、チームの人数を教えてください。 |
| 考え方 | 設計で迷った場面と、最終的にその方法を選んだ理由は何ですか。 |
| 学び方 | 新しい技術を業務で使ったとき、どのように調べて身につけましたか。 |
| 働き方の希望 | 在宅勤務と出社について、どのような働き方を希望していますか。 |
採用代行の現場で分かっていること
中小企業のエンジニア採用でよく起きるのは、1人で何でもできる人を求めて応募が来ないケースです。サーバー、画面、インフラ、社内のパソコン管理まで必須条件に並べると、当てはまる人はほとんどいません。まず必須の経験を2つに絞り、残りは「歓迎」に移します。
次に多いのが、求人票に開発環境が書かれていないケースです。社内で当たり前になっている言語やツールほど書き漏れます。現場のエンジニアに10分だけ時間をもらい、使っている技術と体制を書き出してもらうと、原稿の質が上がります。
スカウトでは、候補者の経歴のどこを見て声をかけたかを1文入れると、返信が得やすくなります。定型文の一斉送信は、エンジニアに読み飛ばされがちです。
選考では、面接の日程が2週間先になり、その間に他社で決まってしまう例が目立ちます。面接官の候補日を先に週2枠ほど押さえておくと、応募から面接までの日数を短くできます。合否の基準も面接の前に紙1枚にまとめておくと、面接官ごとの判断のずれが減ります。
よくある質問
ITエンジニアの求人倍率はどのくらいですか?
厚生労働省の一般職業紹介状況では、2026年8月の情報処理・通信技術者の有効求人倍率は1.33倍です。新規求人倍率は2.88倍で、いずれもパートタイムを含む常用の値です。
未経験のエンジニアを採用して育てる方法はありますか?
あります。job tagでは、プログラマーの有効求人倍率は0.98倍で、システムエンジニアより低い水準です。教える人と期間を決めてから募集すると、育成型の採用が進めやすくなります。
エンジニアの求人票で必ず書くべき項目は何ですか?
仕事内容、開発環境(言語・ツール)、開発体制、働き方、必須の経験の5つです。2024年4月からは、業務と就業場所の変更の範囲の明示も必要です。
エンジニアの採用業務を外部に任せることはできますか?
面接以外の業務は採用代行に任せられます。助っ人人事は月額15万円(税抜)から、求人原稿の作成、媒体運用、スカウト、候補者対応、日程調整などを代行します。
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